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FC本部が提示する「月商○万円」をどう検証するか — 数字の読み方と独自試算の方法

フランチャイズ加盟説明で示される「月商○万円」「月収○万円」という数字の根拠を、法定開示書面と自分自身の試算で検証するための具体的な手順。構造的楽観バイアスを排除して判断するためのDecision Checkを収録。

【結論・この記事でわかること】

FACT: フランチャイズ加盟説明で提示される「月商」「月収」は、本部が選定した好調店舗または中央値データを基にしていることが多く、法定開示書面には「平均」「中央値」「最高値」の別が必ずしも明記されない。
ANALYSIS: 提示された数字が「平均」か「最高値」かによって、自分が現実的に期待できる水準は大きく変わる。数字の「前提条件」を把握しないまま判断すると、開業後の収益予測が大幅にずれるリスクがある。
HYPOTHESIS: 本部提示のモデル収支と加盟店の実態収益の乖離は、立地・業態・本部のサポート水準・加盟者のオペレーション能力など複数の変数に依存するため、一概に「水増し」とは言えないが、慎重に検証する価値は常にある。

1. なぜこの判断が難しいのか

「月商○万円モデル」が魅力的に見える理由の一つは、具体的な数字が提示されることによる心理的安心感にある。「根拠のある計画」に見えるため、自分で試算することなく鵜呑みにしてしまいやすい。

しかし、モデル収支に使われる数字は以下の点で注意が必要である:

  • 「平均」「中央値」「最高値」のどれかが不明なことがある
  • 前提となる立地条件・客数が明示されていないことがある
  • ロイヤリティや本部に支払う諸費用が明示されていても、実際のコスト構造(人件費・光熱費・食材原価等)の前提が現実と乖離している場合がある

2. 判断に必要なFact

FACT: 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の統計では、加盟前に法定開示書面を受け取ることが義務付けられており、書面には直近3期の財務情報(本部の損益)が含まれる。ただし、個別加盟店の収益データの開示は義務付けられていない
FACT: 「損益分岐点売上高」は、以下の計算式で求められる。

```

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 粗利率

例)

固定費:家賃15万円 + 人件費30万円 + ロイヤリティ(固定部分)5万円 = 50万円

粗利率:売上の60%

→ 損益分岐点 = 50万円 ÷ 0.6 = 約83万円/月

```

FACT: 上記の計算は簡易式であり、変動費型ロイヤリティ(売上の○%)の場合は、粗利率からロイヤリティ率を差し引いた「実質粗利率」で計算する必要がある。

3. よくある失敗パターン

パターン A:「月商」と「月収(手取り)」の混同

月商(売上)と月収(自分の手取り)の差は、ロイヤリティ・人件費・家賃・原材料費・水道光熱費などが差し引かれた金額である。「月商100万円のモデル」を「月100万円が入ってくる」と誤解して計画を立てると、収支計画が根本的に誤りとなる。

パターン B:「好調期」のモデルを基準にする問題

飲食業やサービス業は季節変動・景気変動の影響を受ける。本部が提示するモデルが「繁忙期の実績」を基準にしている場合、閑散期には赤字になる可能性がある。

パターン C:「自分なら頑張れる」という根拠のない上方修正

客数・客単価を本部モデルより高く見積もって試算する心理的傾向は広く知られている。自分が上方修正する場合は、その根拠(競合店調査・人通り調査等)を明示できるかを自問することが重要である。


4. 数字で考える

自分で行う独自試算の手順:

STEP 1:固定費を洗い出す

| 費用項目 | 本部モデルの数値 | 自分の試算値 |

|----------|---------------|------------|

| 家賃(本部想定/実際の候補物件) | — | — |

| 人件費(スタッフ数×時給×稼働時間) | — | — |

| ロイヤリティ(売上○%または固定額) | — | — |

| その他固定費(システム使用料等) | — | — |

| 合計固定費 | — | — |

STEP 2:粗利率を確認する

本部モデルの「粗利率」を書面から確認する。業態によって大きく異なるが、飲食業では食材原価率が売上の30〜40%になることが多い。

STEP 3:損益分岐点を計算する

「合計固定費 ÷ 粗利率」で、毎月最低限必要な売上高が算出される。これが「想定立地で現実的に達成できる売上高」かどうかを、候補地の人通りや競合状況から独自に判断する。

ANALYSIS: 本部モデルの損益分岐点と、自分が試算した損益分岐点が大きく乖離する場合は、どの費用項目の前提が異なるかを特定し、本部に質問することが有効である。

5. 見落としやすいリスク

  • 開業初月〜3ヶ月の「低稼働期」: 新規開業の店舗は認知度が低いため、安定稼働に達するまでに数ヶ月かかることが多い。この期間のキャッシュフローを資金計画に含めているかを確認する
  • 設備投資の減価償却: 内装・設備への初期投資は減価償却費として毎月の損益に反映される。モデル収支に減価償却が含まれているかを確認する
  • 本部への諸費用(研修費・システム利用料等): 月次ロイヤリティ以外に、初期や定期的に発生する費用の全体像を開示書面で確認する

6. 相手(FC本部)に確認すべき質問

1. モデル収支の「月商○万円」は、全加盟店の平均値か・中央値か・任意に選んだ事例か

2. モデル収支の前提となる立地条件(人通り・駅距離等)はどのように設定されているか

3. 開業初年度と2〜3年目の収益推移の実績データはあるか(開示できる範囲で)

4. ロイヤリティは売上に対してか粗利に対してか。変動ロイヤリティの場合、上下限はあるか

5. 設備・内装の更新義務はいつ、どの程度の費用が見込まれるか


7. 自分でできる検証ステップ

STEP 1:候補物件の人通り・競合を自分で調査する

候補地周辺の人通り(ピーク時・閑散時)を自分で計測する。本部提示モデルの前提客数と比較する。

STEP 2:同業他店の価格帯・客数を観察する

候補地近くの競合店(同業態または代替サービス)の価格帯・混み具合を数日間観察し、需要の現実感を掴む。

STEP 3:開業資金・運転資金・生活費の合計を試算する

初期投資額+開業後6ヶ月間の運転資金(損益分岐点売上を達成できない期間をカバーする額)+その間の生活費を合計し、手元資金・借入計画と照合する。


8. Decision Check ✅

| # | 確認項目 | GREEN ✅ | YELLOW ⚠️ | RED 🔴 |

|---|---------|---------|---------|------|

| 1 | 「月商」と「月収(手取り)」の違いを理解しているか | 計算式まで把握済み | 概念は分かるが数字で確認していない | 混同している |

| 2 | モデル収支の数字が「平均・中央値・事例」のどれかを確認したか | 確認済み | 確認中 | していない |

| 3 | 損益分岐点を自分で試算したか | 試算済み・達成可能と判断 | 試算中または本部モデルのみ | していない |

| 4 | 開業初月〜3ヶ月の低稼働期のキャッシュフローを計画したか | 計画済み(6ヶ月以上カバー) | 計画中(3ヶ月程度) | 計画していない |

| 5 | 候補立地で実際に人通り・競合を自分で調査したか | 複数日・複数時間帯で実施 | 1回のみ | していない |

| 6 | ロイヤリティの計算基準を正確に把握しているか | 計算式と金額を試算済み | 概要は聞いているが試算なし | 未確認 |

判断の目安:

  • GREEN 5〜6項目: 数字の根拠をほぼ自分で検証できている状態。
  • YELLOW 3〜4項目: 確認不足の項目あり。署名前に補完することを推奨。
  • RED 2項目以下: 収益予測の根拠が不十分な状態。
※ このDecision Checkは判断の補助ツールです。加盟の是非を判断するものではありません。

9. 関連するFactLayer事例


10. 次にやること

1. 今日: 本部から受け取ったモデル収支の「月商○万円」が「平均値か・中央値か・特定事例か」を確認するメールを送る

2. 今週中: 上記の損益分岐点試算シートを自分で埋める

3. 開業前: 候補立地で複数日・複数時間帯の人通り調査を実施する

➔ フランチャイズ加盟前に確認すべき10項目

➔ 既存加盟店オーナーへ聞くべき15の質問

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情報収集・着想フェーズ熱狂と広告バイアスを解きほぐす

「良さそうに見える」という直感は大切にしつつ、提示される成功事例の背後にある業界全体の淘汰ペースを客観的なデータで把握する段階です。

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帝国データバンク「休廃業・解散動向調査」より

2024〜2025年の企業休廃業・解散件数は年間約6万7,000件〜6万9,000件の高水準で推移。特筆すべきは「直近決算で黒字であった企業」の休廃業割合が約半数を占めている点です。黒字であっても先行きの不安や資金繰り、人手不足で撤退する事業者が後を絶ちません。

成功確率を高めるための自己検証ヒント

HINT 1
「成功した人の声」だけで判断しない

説明会や広告では生存したトップ10%のモデルが強調されがちです。失敗した人、撤退した人がどのような理由で離脱したのかを並行して集めることで、判断の解像度が上がります。

Q. 私は「うまくいかなかった場合のシナリオ」を少なくとも3パターン具体的に想定できているか?

HINT 2
業界全体の倒産・淘汰トレンドを見る

帝国データバンクの業種別動向では、物価高・人件費高騰の影響を受けやすい業種(飲食店、小規模小売等)の倒産が高止まりしています。成長市場か、それとも成熟・過当競争市場かを確認してください。

Q. 自分が参入しようとしている市場は、原材料や人件費が10%上がっても利益が残る構造か?

フェーズ01のアクションチェック

完了したらチェックを入れてください

始める前の迷いは、弱さではなく「優れたリスク管理能力」の表れです。じっくりファクトを集めましょう。

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